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サステナビリティという言葉が一般化し、事業活動での環境配慮は当たり前のこととして浸透しておりますが、最近、新たに環境再生を意味する「リジェネラティブ(Regenerative)」という言葉が聞かれるようになりました。環境再生とはどのようなことか、今世界で注目されているリジェネラティブ農業とは何か、その取り組みを紹介してまいりましょう。
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■リジェネラティブとは |
リジェネラティブ(Regenerative)とは「再生」を意味します。
この言葉を冠した「リジェネラティブ・オーガニック農法」は、オーガニック農業の最善部分を基礎に構築した、土壌の健康、動物福祉、労働、農家に配慮した新しい農法です。
サステナビリティという概念では、地球に対するネガティブな影響を減らすことが行動の中心で、プラスの側面を生み出すことに繋がらなかったり、人間が地球環境を外側から見て課題を解決しようとするため、人と自然が切り離された状態でのアプローチになっていたりするという限界があります。
リジェネレーションという概念では、地球システムに付加価値が生まれる仕組みを追及するため、生命全体を成長させることに繋がります。また、地球システムの一端に組み込まれた人間が地球とともに繁栄してくという発想のため、自然との相互の繋がりを感じながら共生を目指すことができます。
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■リジェネラティブ農業とは |
リジェネラティブ農業は「再生農業」「再生型農業」などと和訳されます。
「環境再生型農業」と呼ばれ、農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復につなげることを目指す農業を指します。
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【リジェネラティブ農業の特徴】
現時点で明確な決まりは定められていないようですが、活用されている農業技術は以下の通りです。
・不耕起栽培
・有機肥料や堆肥の活用
・被覆作物の活用
・輪作や間作
不耕起栽培は土を耕さずに農作物を栽培する方法です。耕起の元々の目的には、耕すことで作物の栽培に適していない土壌を柔らかくし、乾土効果をもたらすことが挙げられます。
その一方、耕起を行うことで土壌が風や雨による浸食を受けやすくなるデモリットもあります。
耕起を減らすことで土壌浸食が削減されることや土壌の水分保持、土壌有機物の蓄積、空気中の炭素を地中に留められるなどの観点から、リジェネラルティブ農業では、土壌を修復・改善を目的としているため、化学的に合成された農薬や肥料は用いず、有機肥料や堆肥を活用します。有機肥料や堆肥、また土壌侵食の防止や雑草の抑制などを目的に植えられる被覆作物は土壌有機物の増加に寄与します。
輪作や間作は土壌の生体バランスを整え、土壌中の栄養素の偏りや病気の蔓延、害虫の増殖を防ぐのに役立ちます。
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■リジェネラティブ農業が発揮する効果について |
・温室効果ガス排出量の削減
・気候変動を食い止める
・収穫量の向上
・干ばつに強い土壌を作る
・地域経済の活性化
・生物多様性を育む
・栄養状態を改善する
リジェネラティブ農業は気候変動に対する有効的な対策となるだけではありません。
上記で紹介したような農業技術の活用により、植物や土壌中の生物多様性を向上させることができれば、農作物の病害虫に対抗する植物や花粉媒介者、益虫などの生息地の増加が期待されます。またこれらの技術で健全な土壌が作られれば、高品質で栄養価の高い食糧生産に繋がります。土地を改善させながら生産性の高い農業を作ることができれば、地域社会や経済にもよい影響を及ぼします。
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昨今の集中豪雨や台風の強度の大きさから、気候変動の影響が感じられるようになりました。「リジェレラティブ農業」はまだ新しい言葉でありますが、その発揮する効果から、今後より一層関心が高まっていくことと思われます。
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