>> BCPをわかりやすく解説
昨今よく耳にする、BCP。
BCPの基礎知識や具体的な取り組みなど、改めて解説してみましょう。
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■BCPとは |
BCPとは、「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で、日本語では、
「事業継続計画」と呼ばれています。
緊急事態における企業防災やリスク管理方法のひとつであり、企業が生き延びるための対策です。
近年では、2011年に発生した東日本大震災や集中的な豪雨、そして新型コロナウイルス感染症の拡大など、企業に直接的なダメージを与える災害が頻発していますね。
企業の存続はもちろん、また、取引先・投資家からの評価につなげるためにもBCPが必要です。
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■BCPの必要性 |
緊急事態の発生に備えて企業の存続を目指すBCPですが、さまざまな目的があります。
□災害発生時の被害を緩和
災害発生時の被害を緩和するために求められる対策です。
近年地震や集中豪雨など、大規模な自然災害が頻発しています。
都市部の本社機能だけでなく、地方に設置している工場や営業所が被災する可能性が高まっています。
自然災害は企業経営そのものに直接的な影響を及ぼす危険性があるため、BCPの取り組みが必要不可欠です。
□取引先や投資家からの信用性を高める
BCPを実施している企業は、災害発生時やあらゆるリスクに対応できるとみなされるため、取引先からの信用を得ることができます。
また、投資家からの評価基準にもなっており、将来的に有利に経営を進めやすいメリットもあります。健全な企業経営を行うためにも、BCPは効果的な対策です。
□従業員の安心感
災害リスクによる企業経営への影響を緩和できることから、従業員が安心感を持てるようになります。
十分なリスク管理がなされていないことで、自然災害への恐怖心が増し、自分の仕事がなくなるのではないかという不安を持つ従業員が出てしまいます。
BCPでは、災害が発生した場合でも、企業が存続できるような対策を実施しているため、急に仕事がなくなるようなリスクを軽減できます。
さらに、従業員が安定して仕事に打ち込めるようになり、企業全体における生産性向上にも役立ちます。
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■BCPを作成する方法 |
BCPの策定方法について、企業が取り組むべきポイント
□BCPの基本方針を決める
BCPで目指すこと、BCPを通して実現することなどをまとめ、組織内で共有することが大切です。このとき、経営層だけでなく、現場で働く従業員の意見も参考にすることで、経営陣と従業員の認識の差が縮まるようにしましょう。
□企業への影響度を測定
基本方針をまとめたあと、事業影響度分析(BIA)と呼ばれる、企業への影響を測定します。
具体的には、災害時に、自社でどのような影響が発生するのか、影響がどの時系列で進んでいくのかといったことです。
同時に、影響度を踏まえて、事業を継続するべき優先度を決め、優先度が高い順番から復旧するように準備します。
影響度が少ない事業から復旧させることで、災害発生後の企業活動の安定性につながります。
□必要な戦略をとり、計画書を作成
最後のステップは、事業への影響度や時系列、そして優先度などを計画書に落とし込むことです。
また、計画書に加えて、BCPの教育計画や訓練計画、定期的な更新計画などを含ませるようにします。
計画書を作成後、実際に現場で働く従業員にも閲覧してもらい、経営者との考え方に乖離がないかをチェックすることも必要です。
そのほか、専門家にも相談することで、BCPの計画書に信頼性にも厚みが増します。
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■BCP対策を行う企業のためのチェックリスト |
中小企業庁作成のチェックリストより一部抜粋してご紹介いたします。
(BCP取組状況チェックリスト(入門コース)の一部)
□人的資源(モノ)
・緊急事態発生時に、支援が到着するまでの従業員の安全や健康を確保するための災害対応計画を作成していますか?
・災害が勤務時間中に起こった場合、勤務時間外に起こった場合、あなたの会社は従業員と連絡取りあうことができますか?
□物的資源(金)
・1週間又は1か月程度、事業を中断した際の損失を把握していますか?
・あなたは災害後に事業を再開させる上で現在の保険の損害補償範囲が適切であるかどうかを決定するために保険の専門家と相談しましたか?
□物的資源(情報)
・情報のコピー又はバックアップをとっていますか?
・主要顧客や各種公共機関の連絡先リストを作成する等、緊急時に情報を発信・収集する手段を準備していますか?
□体制等
・緊急事態に遭遇した場合、あなたの会社のどの事業を優先的に継続・復旧すべきであり、そのためには何をすべきか考え、実際何らかの対策を打っていますか?
・取引先及び同業者等と災害発生時の相互支援について取り決めていますか?
(※出典:「中小企業BCP策定運用指針 〜緊急事態を生き抜くために〜」/中小企業庁 2021.6月時点より)
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■BCPの取り組み事例 |
□製造業の事例
バネなどの製造販売を行うA社では、会社が海の近くに位置していることから、東日本大震災を教訓にBCPを策定。社員とその家族の安否確認を行うシステムの導入、社屋や機械などへの防災対策のほか、県外の企業と災害時に応援を依頼する為の相互応援協定を締結しています。
□建設業の事例
熊本地震をきっかけにBCP対策を見直し。データのバックアップ、発電機の用意、代替拠点の確保などのほかに、年2回社内で緊急時の訓練を実施しています。
□工務店の事例
大型台風による被害を教訓から災害対応マニュアルを作成し、台風被害が出るたびに改定し続けています。熊本地震の際には、前震の翌朝から修理や安全点検を行ったり、早々にグループ会社と連携を取ったりすることで、必要な人材や物資の確保に成功しました。
□サービス業の事例
取引先の工場の停止やインターネット回線の断絶を想定したBCPを策定しました。独自にバックアップシステムを構築したり、被災時のための備品の用意や運用訓練などを実施したり、年に1度BCPの内容の見直し、備品の点検などを行っています。
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BCP対策は緊急時に事業を継続、復旧させるための重要な取り組みです。
身近な問題から取り組みを始めてみることもよいかもしれませんね。
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