>>その技術とビジネス展開
ミドリムシ写真(出典:Wikipedia)
生物の授業でおなじみのミドリムシ。栄養素が豊富な上、光合成をするため、二酸化炭素削減にも貢献していると今注目です。今回はこのミドリムシを使ったユーグレナビジネスについて紹介していきます。
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■ユーグレナとは |
ユーグレナは学名であり、一般的には和名ミドリムシとして親しまれている藻の一種です。(名に「ムシ」とつきますが、虫ではなく、ワカメやコンブと同じ「藻」の仲間です。)
ユーグレナは鞭毛で動きまわる動物の性質と、葉緑素を有し光合成を行う植物の性質を持ち合わせた、単細胞真核藻類の一種になります。
ユーグレナの研究自体は日本においては1970年代から活発に進められてきました。1990年代には環境技術としての利用が検討され、研究が行われていました。具体的には、二酸化炭素が含まれる火力発電所等からの排気ガスをユーグレナ培養槽に導入し、光合成させることで二酸化炭素を削減し、培養槽で成長したユーグレナを食糧として利用することを目的としています。
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■大量培養技術を確立 |
研究室レベルでのユーグレナの培養自体は、無菌状態を保つなどによって行うことができていました。しかし、事業として展開する際には大量に、かつ需要に即して安定的に供給できる生産体制を整えることが必要になります。食品として流通させるには求められる生産量が大きく、この実現が高いハードルとなります。
屋外での培養は培養条件を一定に保つことが困難で再現性が乏しかったが、環境変化に耐えられるように培養液などさまざまな培養条件をコントロールすることで、食品として流通可能な規模での培養を2005年12月に実現します。ユーグレナが増殖する一方、それ以外の生物が増殖しない条件を整えることが重要となりました。大きなスケールでの生産を実現したことを契機に、食品などの市場に流通させることが可能となり、事業としての展開が大きく見込めるようになったのです。
一般的に生産されたバイオマスの利用方法として、バイオマスの5Fという考え方があります。バイオマスは一般的に、食品(Food)、繊維(Fiber)、飼料(Feed)、肥料(Fertilizer)、燃料(Fuel)という順で付加価値が高く、上位から順に利用することで、環境負荷の軽減と高い事業性を同時に実現することが可能になります。ユーグレナもバイオマスの1つと捉えればこの考え方を適用することが可能です。
【ユーグレナによる循環型社会の構築イメージ】
(出典:科学技術振興機構)
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■主な事業展開 |
■ヘルスケア事業
ユーグレナは食品としては、含有される栄養素の種類が多いことから栄養価が極めて高く、消化・吸収を妨げる細胞壁がないことから消化率も高い。またその含有成分により抗腫瘍効果や抗アレルギー効果などを見出して、食品素材としての活用の幅を広める研究が進められています。
■環境・エネルギー事業
ユーグレナは培養方法次第で、ジェット燃料への加工が可能なワックスエステルという脂質を多く含有させることができます。油脂含有率と油脂組成は培養条件によって大きく変動するため、安定した培養を維持しながら、油脂含有率を高める技術開発が
必要とされます。
大気中に放出されたり、あるいは放出される二酸化炭素をユーグレナを介して燃料等の有用な物質に変換し、(地中から取り出して利用される化石燃料を少なくすることで)
循環型社会に寄与する事業の構築が進められています。
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