富山ではすっかりおなじみの「融雪装置」ですが、雪の降らない地域の方にはあまり
なじみがないかもしれません。富山県民が雪に慣れているとは言え、雪の道路は悪
路となり、車で通行するには危険が伴います。こんなとき、降雪を感知して水を出して
雪を融かしてくれる融雪装置が活躍してくれます。ちなみにこの融雪装置、正式には
消雪パイプと言うそうです。
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融雪装置のない道路 |
融雪装置のある道路 |
上の写真のとおり、融雪装置の効果は一目瞭然ですね。
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■水源としくみ
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融雪装置からチョロチョロと出るあの水、どこの水を使っているか疑問に思われた
ことはありませんか。使う水は基本的には地下水。道路の延長百〜千メートルごと
に井戸を掘り、取水ポンプを設置。雪が降るとポンプが作動し、水をくみ上げて道路
に埋め込んだパイプに送水し、散水ノズルから地上に噴き出る。という仕組みです。
地下水は確実に水源を確保できることに加え、冬でも水温が15度ほどと温いとい
う利点があります。但し、地盤沈下の恐れがある場合などは川や農業用水を水源
にしている所もあります。
次の疑問は、どうやって雪が降ったことを感知しているのか、ということ。
井戸のそばには細長い柱が立っていてその柱の上に感知器が設置されています。
地上から約2.5メートルに「降雪探知機」が設置されていて、小さな受け皿の中の
遮光センサーで雪を感知すると、近くの制御盤を通じて自動的に井戸の取水ポン
プのスイッチが入る。皿の雪は電熱線で融かす仕組みで雪がやむと水は自動的
に止まる。というもの。あたりまえのようですごいのは、雪なのか雨なのかだけで
なく、木の葉が落ちたものなのかちゃんと見分ける点。雪が降った時に時にしか
働かないそうです。
ただ、手動で操作を行うこともあり、気温が零度以下に冷え込む時は散水で道路
が凍結する危険があるため、事務所の端末で操作し、散水を止める場合もあり
ます。
また、この融雪装置、国道や県道など大きな幹線道路にはありません。交通量が
多いためで、その分、除雪車がすぐに出動してくれます。大きな除雪車がすぐに
出動できない道路の狭い住宅街や、商店街などでよくみられます。
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■発祥の地と使われている地域 |
ちなみにこの融雪装置の発祥の地をご存知でしょうか?
答えは、豪雪地として知られる新潟県長岡市。同市役所によると「1961(昭和
36)年に、「柿の種」で知られる市内の製菓会社、浪花屋製菓の創業者で当時
市議だった故今井與三郎さんが、市道に日本で初めて設置したのが始まり」だ
そうです。周囲には雪が積もっているにも関わらず、地下水の滲みだしてしる箇
所だけ雪がないことに目をつけ、考案したとされています。
発祥の地である長岡市をはじめ、長野県北部、山陰、北陸から東北の平野部で
雪の多く降る比較的気温の高い地域ではよく見られる融雪装置。しかし、北海道
や山間部など、気温の低い地域では、消雪自体が凍ってしまうため、路面に埋設
された電気ヒーターや温水管を熱源とすることで融雪する、ロードヒーティングが多
く用いられています。 |
■融雪装置による弊害 |
この融雪装置は多くの弊害も生み出しました。最も顕著なものは地下水の汲み上げ
過ぎによる地盤沈下。一部の地域では深刻な問題となっており、このため、道路を
管理する地方自治体は地下水に替わる新たな水源の確保が求められています。19
87年には建設省がその水源に多目的ダムを利用する方針を採用し、「雪対策ダム
事業」として消流雪用水という新目的を1990年に設けました。現在、富山県を中心
に北陸地方の幾つかのダムで実用化されています。その他、前項にも述べましたが
河川、用水を利用した施設もあります。 |