■海洋深層水とは? |
富山湾の水塊構造(水産研究所) |
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海洋深層水は、「太陽光が届かず、また、表層の海水
と混ざらない深さにある海水」を言います。通常は水深
200mより深いところにある海水を海洋深層水と呼んで
おり、海水の約95%を占めています。
海洋深層水は、グリーンランド周辺で表層が外気など
により冷やされ、垂直に沈み込む海流が一度も大気に
触れることなく、インド洋や北太平洋を巡り、表層域へ
湧昇するのもでこの海流を一周するのに2000年の歳
月が掛かるといわれます。
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■海洋深層水の特徴 |
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<その@−清浄性>
産業排水、生活排水における汚染の影響をほとんど受けません。
また、太陽の光が届かないのでプランクトンなどによる光合成が行われず、水質悪化の
原因となる有機物の濃度が低いので清浄な水といわれます。
<そのA−富栄養性>
太陽の光が届かないので栄養物質を消費してしまうプランクトンが存在せず生命活動に
かかせない無機栄養塩が豊富に含まれています。
<そのB−低温安定性>
太陽の光が届かないので年間を通して水温が低く安定しています。そのため表層水と
深層水が混じり合うことはありません。これは清浄性を保つ効果があります。
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■産業への応用 |
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富山県では2000年から非水産分野の企業への分水を始めました。 また、水産分野への
利活用では水産庁の補助を受けて富山県入善町で無機栄養塩に富み雑菌が非常に少
ないという特質を利用してアワビなどの養殖業に利用されています。
健康増進分野では、1998年に、富山県滑川市に世界で初めての深層水体験施設がオープ
ンし、多くの人々の健康作りに利用されています。富山医科薬科大学医学部(現:富山大学
医学部)と富山県衛生研究所が、共同研究を行い、深層水浴によるリラクゼーション効果の
高さを研究し、成果について学会発表を行っています。現在は、深層水浴による皮膚への
効果についての共同研究を行っています。
また、冷熱源としての利用については、富山県入善町において2009年に無菌包装米飯の
製造・販売会社が操業を開始。この会社では、海洋深層水の低温性に着目し、製造段階
で高熱が発生する工場内の冷却用に深層水が利用され、深層水で冷却された水が施設
内の配管を循環しています。 このことにより工場の冷房に係るコストの削減が見込まれ、
さらにはCO2の排出削減が図られることにもなります。
【海洋深層水の利活用】
深層水の利用が期待される分野と具体的利活用例
水産 |
有用魚介類の無病種苗生産、養殖(ヒラメ、マダイ、アワビ等)
深海性生物等の種苗生産(タカアシガニ、イセエビ、ウナギ等)
藻類の生産(アラメ、カジメ、クロレラ、スピルリナ等)
漁場環境改善(磯焼け対策、藻場造成等)
水産流通(活魚輸送、蓄養、鮮度保持、魚市場利用等)
水産加工(塩干品等) |
食品 |
健康食品(清涼飲料、酒、塩、その他)
食品添加物(カロチノイド類(藻類利用)等) |
医薬医療 |
医薬用薬剤(有用物質等)
海洋療法(タラソテラピー、入浴剤) |
化学 |
有用物質(ミネラル、希少金属類等) |
農業 |
低温利用(貯蔵、低温性作物、出荷時期調整等) |
エネルギー |
冷温利用(冷熱源、冷却水、温度差発電等) |
環境 |
モニタリング(海洋環境把握、有害物質把握)
海域環境(海域浄化、CO2固定化等) |
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